連日怖い話でもしますか?

霊感もないのに昔は1人でいるのが怖い子でした。

「市街地廃倉庫連続怪異事件:捜査報告書」

第一部:事件概要

報告書番号:2045-RK001

作成者:ヨコハマ中央署 特別捜査課 巡査部長 タカハシ

作成日:2024年12月31日

概要

2024年10月中旬から12月下旬にかけて、ヨコハマ市街地北部の廃倉庫地帯において、失踪事件および怪異現象が連続的に報告された。本報告書は、発生した計4件の主要事案を基に、現地調査および被害者家族・目撃者の証言をまとめたものである。なお、本事件において直接的な犯人および物的証拠は未だ発見されておらず、「未解決事件」として暫定的に整理されている。


発生地点および背景

事件の発生した倉庫地帯は、ヨコハマ市北部外周の工業区域に位置し、約10年前の産業構造変化によって廃棄された施設が多く存在する。現在は一部が物流倉庫として使用されているが、大部分は人の出入りがほぼない閉鎖空間となっている。

地元住民によると、廃倉庫地帯には「夜間に立ち入るとおかしなことが起きる」という噂が古くからあり、一部では「消える倉庫」とも呼ばれていた。しかし、警察への通報や具体的な被害は近年まで報告されていなかった。


主要事案一覧

以下に本事件に関連すると推定される4つの事案を時系列順に記録する。

  1. 第一事案:10月15日
     物流会社従業員1名が業務中に失踪。現場には靴と異常な黒い液体が残されていた。

  2. 第二事案:11月3日
     地元住民2名が廃倉庫の近辺で倒れているのを発見。目撃証言によれば、倉庫の中から人影がこちらを見ていたとされるが、具体的な記録は曖昧。

  3. 第三事案:11月27日
     大学生4名が肝試し中に倉庫内部で奇声を聞き、うち1名が原因不明の失明。現場調査では不明な機器の残骸が発見された。

  4. 第四事案:12月19日
     調査を行っていた地元フリーライターが連絡を絶つ。最後のメッセージには「倉庫の奥に何かいる」と記載。


捜査の目的と範囲

ヨコハマ中央署は、以上の事案が単発的な事件ではなく連続性を持つ怪異現象である可能性を重視し、捜査班を編成。倉庫地帯の全域を調査対象とし、防犯カメラ映像、目撃者証言、現場遺留品を主な分析対象とした。特に、事案の背景に潜む要因を解明することを目的とした。


次回予告:第二部「目撃証言・被害者の記録」

次回は、被害者や目撃者の証言内容を詳しく報告します。それらの記録には、不自然な共通点矛盾した供述が数多く含まれており、事件の不気味さがさらに浮き彫りになります。

 
 
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では、続けて最後まで作成いたします。ここから物語が進むにつれて、緊張感と恐怖感を高めていきます。以下、第二部を始めます。


第二部:目撃証言・被害者の記録

証言1:物流会社従業員(第一事案の目撃者)

証言者:タカギ(仮名・40代男性)
職業:物流倉庫の夜間作業員

証言要旨
「10月15日の夜、いつも通り夜勤作業をしていた。その日は大型トラックの積み下ろしが遅れて、22時を過ぎても片付かなかったんだ。同僚のイシイ(仮名・失踪者)は、荷物の確認をするために倉庫の裏手に向かったんだが、それが最後に見た姿だった。10分ほどしても戻ってこないので探しに行ったら、あいつの靴と……なんだかわけのわからない黒い液体が落ちていて……。近づいた瞬間、ひどい臭いが鼻を突いたよ。まるで鉄錆と腐った肉を混ぜたような……。あんな臭いは初めてだった。すぐに警察を呼んだが、イシイの姿は結局見つからなかったんだ。」


証言2:地元住民(第二事案の被害者)

証言者:オカザキ(仮名・30代女性)
職業:会社員

証言要旨
「11月3日の夜、友達と二人で廃倉庫の近くを歩いていた。ちょっと怖い話をしながら、その辺をうろうろしていたんだけど、ある倉庫の中から妙な音が聞こえたの。カリカリ……って、何かを引っ掻くような音だった。最初は猫か何かかと思ったけど、次第に音が不規則になって、壁を叩くような感じに変わった。それから窓越しに何か動いたのが見えて……正直、それが人だったのか、動物だったのかも分からない。とにかく、嫌な感じがしてその場を離れた。しばらくすると友達が突然倒れて……気が付いたら救急車の中だった。」


証言3:大学生グループ(第三事案の被害者)

証言者:ハラダ(仮名・20代男性)
職業:大学生

証言要旨
「11月27日の夜、大学の友達4人で肝試しに行った。倉庫の中は想像以上に広くて、薄暗い空間が無限に続いているような感じだった。俺たちはスマホのライトを使って奥まで進んでいったんだけど、突然、どこからともなく高い音が響いた。金属を擦るような、キーンって音だった。それから、俺たちの1人が急に目を押さえて倒れ込んだ。慌てて引き返して病院に連れて行ったけど、医者には『物理的な外傷はない』って言われて、結局原因は分からなかった。倒れた友人は今でも視力が戻らない。」


証言4:フリーライター(第四事案の失踪者の友人)

証言者:カネコ(仮名・40代男性)
職業:フリーライター

証言要旨
「12月19日、友人のナカジマが『倉庫地帯の噂を記事にする』って言って取材に行ったきり、連絡が取れなくなった。最後に届いたメールには、『倉庫の奥で見つけた。これを記事にすれば世間が変わる』とだけ書かれていたんだ。すぐに警察に相談したけど、ナカジマの行方は掴めなかった。あいつが消える直前に電話をしてきたんだが、その時、何かのざわめき声みたいなのが聞こえていた。あれが何だったのか、今でも分からない。」


次回予告:第三部「捜査経過と異常事例」

目撃証言や被害者の記録から、捜査班が動き出す。しかし、倉庫地帯に足を踏み入れた捜査員たちが目の当たりにしたものは、さらに異常な出来事だった。

第三部:捜査経過と異常事例

2024年11月末:初動捜査の経緯

ヨコハマ中央署は、目撃証言および被害状況の共通性から、廃倉庫地帯全域の調査を開始した。初動捜査では以下の調査が実施された。

  1. 現地踏査
  2. 防犯カメラ映像の解析
  3. 失踪者および被害者の関連性調査

特に、第三事案で発見された「不明な機器の残骸」に焦点を当てた分析が進められた。しかし、現地調査中に不可解な現象が相次ぎ、捜査班に動揺が広がる。


捜査記録1:現場調査班の異常報告

報告者:特別捜査班 隊員A(匿名希望)

記録内容
「現地調査の初日、11月30日。隊員6名で廃倉庫の外部と内部を分担して捜索した。外部は特に目立った異常はなかったが、内部の調査を開始した直後、隊員の1人が倉庫の奥で奇妙な模様を発見した。壁一面に描かれていたそれは、何らかの古代文字のように見えた。さらに、奥へ進むにつれて、異様に湿った空気と不自然な静寂に包まれた。途中から通信機器が全く反応しなくなり、無線での連絡が不可能となった。調査を続行していると、隊員の1人が突然『音が聞こえる』と錯乱状態に陥り、調査は一時中断された。」


捜査記録2:防犯カメラ映像解析

解析担当者:ヨコハマ中央署 科学捜査班

記録内容
倉庫周辺に設置された防犯カメラの映像を確認した結果、以下の異常が発見された。

  1. 人影のようなものがカメラに映るが、次の瞬間には消えている。
  2. 第四事案当日にナカジマが倉庫に入る姿は確認されるものの、出てくる映像が存在しない
  3. 11月27日の深夜、第三事案の大学生グループが倉庫に入った後、カメラが突然ノイズに覆われ、倉庫内の状況が不明。

捜査記録3:不明な機器の分析

解析担当者:ヨコハマ市 科学研究所

解析結果
第三事案で発見された機器の残骸について調査を行ったが、以下のことが判明した。

  1. 素材は一般的な工業製品で使用されない合金で構成されている。
  2. 内部には生体組織に似た繊維状の物質が付着しており、DNA検査を行ったが既知の生物に該当せず。
  3. 機器は何らかの信号を発信していた可能性があり、周波数解析の結果、音域は人間には聞こえない超低周波を使用していると推測される。

2024年12月中旬:捜査中断の決定

12月15日、捜査班は更なる調査を進める予定だったが、廃倉庫内部で捜査員の1人が突然失踪する事態が発生。直前の記録映像には捜査員が**「何かに引き込まれるように消える」**瞬間が映されており、これ以上の調査は危険であるとして捜査本部は調査の一時中断を決定した。


次回予告:第四部「証拠の分析結果」

現場で得られた証拠を分析した結果、いくつかの科学的な異常が明らかになる。しかし、それらはさらなる謎を呼び起こし、捜査班を困惑させることとなる。

第四部:証拠の分析結果

科学的分析の概要

廃倉庫内で発見された物証および現地調査のデータを基に、科学捜査班および外部の専門機関による詳細な分析が実施された。以下はその結果をまとめたものである。


分析1:黒い液体の正体

採取場所:第一事案発生現場(倉庫裏手)
分析担当機関:ヨコハマ市科学研究所

液体は異常に粘性が高く、一般的な物質に含まれる成分と一致しない成分が含まれていた。主な特徴は以下の通り。

  1. 炭素および金属微粒子が主成分。炭素は有機生命体由来のものと類似しているが、詳細な分析では一致しない。
  2. 液体に触れた試験体(豚皮モデル)が異常な腐食反応を起こすことが確認された。腐食は通常の酸化反応ではなく、細胞組織が内側から崩壊するような現象であった。
  3. 赤外線を当てると、液体が微細な振動を発することが判明。これが現場で報告された高周波音の原因である可能性がある。

分析2:壁の模様の解読

発見場所:第三事案発生現場の倉庫内壁面
分析担当機関:古文字研究所(民間委託)

壁に刻まれていた模様は、一部が解読可能な文字列で構成されていることが判明。文字は既知の言語体系に類似性が見られず、完全な翻訳は不可能であった。ただし、以下の仮説が提出された。

  1. 模様は儀式的な意味を持つ図形であり、何らかの呼び出しや封印を目的としたものと推測される。
  2. 模様に囲まれたエリア内の磁場が異常に高い値を示し、人間の体感や精神状態に影響を与える可能性がある。
  3. 特定の模様の形状が、液体の振動周波数と一致していることが判明。模様と液体には何らかの関係性があると考えられる。

分析3:超低周波の影響

データ提供:第三事案で回収された不明機器の残骸
分析担当機関:通信工学研究所

残骸から検出された超低周波については、以下の異常が確認された。

  1. 低周波は20ヘルツ以下で人間の耳では感知できないが、長時間曝露された場合、不安感、幻覚、吐き気を引き起こすことがある。
  2. 周波数の強度は、現場での測定値では自然界のどの発生源よりも高い。
  3. 倉庫地帯全域にこの周波数が断続的に放射されていることが確認され、これが失踪や健康被害の原因の一端である可能性が高い。

証拠の関連性

以上の分析結果を総合すると、以下の仮説が浮上する。

  1. 廃倉庫地帯は何らかの人為的または超自然的な異常現象の発生源となっている。
  2. 模様、液体、周波数のいずれもが相互に関連し、特定の環境を作り出している可能性がある。
  3. 廃倉庫に足を踏み入れた者は、これらの異常環境に曝露されることで、身体的・精神的被害を受ける。

警察本部の最終判断

証拠の科学的根拠が十分に明らかにされたが、その異常性から通常の法執行機関での対処は困難と判断された。これ以上の捜査は新たな犠牲を生む可能性があるため、廃倉庫地帯を封鎖し、事件は「未解決」のまま捜査を終了する決定が下された。


次回予告:第五部「後日談・未解決の謎」

封鎖された廃倉庫地帯は、噂と共に市民の記憶に刻まれる。しかし、事件の余波は現在も続いている。未解決事件が残した恐怖と謎が、関係者の人生をどのように変えたのかを描く。

 
 
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第五部:後日談・未解決の謎

1. 封鎖後の倉庫地帯

2025年1月、ヨコハマ市当局は倉庫地帯一帯を「危険区域」と指定し、フェンスで封鎖する措置を取った。一般市民の立ち入りは禁止され、公式には「老朽化による建築物の崩壊リスク」を理由としたが、事件に関与した捜査員や地元住民の間では異常現象が原因であるとの見方が強い。

倉庫はその後も放置され、時間が経つにつれて建物はさらに朽ち果てていった。しかし、封鎖された区域の周辺では異様な現象の報告が増加している。


2. 地元住民の噂と証言

匿名の住民(60代女性)

「倉庫が封鎖された後も、夜になるとあの辺から妙な音が聞こえるのよ。ガリガリ……って、何かを削る音みたいなね。最近はその音がうちの家まで届くようになってきてる気がして、正直、夜は怖くて寝られない。」

地元新聞記者(50代男性)

「封鎖される前に倉庫を取材したことがあるけど、あそこには何か普通じゃないものがいる。取材中、ずっと誰かに見られている感じがしてね。周囲に人の気配なんてないはずなのに、振り返ると遠くで倉庫の窓から何かが動いたように見えた。絶対に近づきたくない場所だよ。」


3. 関係者のその後

第一事案の目撃者:タカギ

事件後、タカギは精神的なストレスから仕事を辞め、自宅に引きこもるようになった。彼の家族によれば、「時々何もない天井を見上げて、誰かに謝っている」とのこと。医師の診断では、強いトラウマに基づく幻覚が原因だとされているが、タカギ本人は「今もイシイが帰ってくる夢を見る」と話している。


第三事案の被害者:ハラダの友人

視力を失った大学生は、その後も原因不明の痛みに悩まされ、医療機関を転々としている。一方、友人のハラダは事件後に大学を休学し、倉庫に何があったのかを独自に調査しているとのこと。彼は取材に対し、「あの場所に何かがいるのは確かだ。俺がそれを暴いてやる」と語っていたが、その後、行方不明となった。


4. 発見された未送信のメモ

2025年3月、倉庫地帯近くの空き地で、行方不明だったフリーライター・ナカジマのものとみられる手書きのメモが発見された。メモは雨で大部分が滲んでいたが、以下の内容が読み取れた。

「奥へ進むな。全てを覆う黒いものが――」
「音に耳を貸すな。何かが呼んでいる。」
「これは人間の仕業ではない。そこにいた何かが……」

メモは途中で途切れており、これがナカジマ本人の筆跡であるかの確証は得られていない。


5. 「未解決」の余波

封鎖された倉庫地帯は現在も立ち入り禁止が続いており、地元住民の間では「廃倉庫の奥に何かが潜んでいる」という都市伝説として語り継がれている。一方、未解決事件の特集番組が放送されるたびに問い合わせが寄せられ、ネット上では「失踪者は異次元に消えた」「地底から何かが出てきた」などの仮説が飛び交う。

警察は事件の再捜査を示唆しているが、現場の異常性を懸念して動き出せずにいる。


結び:残された謎

2025年12月現在、廃倉庫地帯では再び奇妙な出来事が起き始めている。通りかかった配達員がフェンス越しに**「白い何かが動いていた」**と証言し、周囲で飼われていた犬が一斉に逃げ出すという報告もある。

倉庫の中で何が起きたのか。それは自然現象か、あるいは人智を超えた何かの仕業か。事件の真相は未だ闇の中に隠され、近づく者に警鐘を鳴らし続けている。


【未解決事件:市街地廃倉庫連続怪異事件】
――「それ」が再び動き出す時、答えが明らかになるのかもしれない。――
(報告書 終了)

怖い話 画像生成は控えめに

第一話 新しい趣味

都内の広告代理店で働くミカは、仕事のストレスを発散するために最近話題のAI画像生成ツールにハマっていた。
仕事終わりの深夜、自宅のデスクに向かいパソコンを開くのが彼女の毎日の楽しみだった。「異世界の街並み」「海底神殿」「古代の祭壇」など、入力する言葉次第で無限に広がる美しい世界は、現実の息苦しさを忘れさせてくれる。

ある夜、ミカはふとしたきっかけで「不気味な」「心を惑わせる」という言葉を入力してみた。
生成された画像は、見る者を引き込むような不思議な魅力を持っていた。薄暗い森の中にうごめく何か、そして焦点が合わない異様な生物たち。だが、その不気味さが逆に魅力的だった。

「すごい…」
夢中でスクロールし続けるミカの手は止まらなかった。そして、ふと一つの画像が彼女を釘付けにした。

それは、うっすらと歪んだ人影が写る薄暗い部屋の写真だった。部屋の中には無造作に置かれた家具があり、誰かがその空間にいるように見えた。だが、その影は異様だった。形が不定形で、よく見ると顔のようなものがうっすらと浮かび上がる。

ミカは少し背筋が寒くなりながらも、生成されたデータを保存した。


第二話 奇妙な違和感

翌日、ミカは仕事の合間に生成した画像を見返していた。すると、その中の一枚に違和感を覚えた。昨夜生成したはずの「歪んだ人影」が映る部屋の写真。写真の隅に置かれた一つの椅子が微妙に動いているように見えたのだ。

「そんなはずないよね…ただの作り物なのに」
そう自分に言い聞かせながらも、彼女は再びAIツールを開いた。今度はさらに詳細なプロンプトを入力し、同じテーマで画像を生成する。しかし、再び現れた画像にも同じ部屋が映り込んでいた。

椅子の位置が変わっている。そして、昨夜はぼんやりとした影だったものが、ややはっきりとした輪郭を持ち始めていた。

「なんで…?」
パソコンの前で固まるミカ。その瞬間、スマートフォンが振動し、彼女は驚いて手を滑らせた。画面に表示されたのは友人のリナからのメッセージだった。

「ミカ、最近家の中で誰かの気配感じたことない?」


第三話:形を持つもの

リナに電話をかけたミカは、彼女の奇妙な話に耳を疑った。
「実は、ミカが送ってきたあの画像ね、どうしても気になって何度か見返してたの。でも、次に見たとき、影の形が変わってたのよ」

「変わったって、どういうこと?」
「言葉通りよ。あれ、生きてるみたいに動いてるの」

リナの声が震えているのがわかった。ミカも薄々感じていた不気味な現象が現実になりつつあった。そして、画像生成ツールを開くたびに、同じ部屋と影が現れるようになった。

最初は興味本位で何度も生成していたミカだったが、次第にその影が動き始め、ついには目のようなものが画面越しに彼女を見つめ返している気配を感じた。


第四話 デジタルの境界

ミカはついにAI画像生成をやめる決心をした。だが、奇妙なことに、ツールを開かなくても同じ画像がスマホやパソコンに現れるようになった。

その夜、家中の電子機器が突然作動し、画面には無数の「歪んだ人影」が映し出された。影は画面の中を歩き回り、まるでこちらの世界に入り込もうとしているようだった。

「お願いだからやめて!」
叫びながらパソコンの電源を落とすミカ。しかし、画面の中の影は消えない。彼女は恐る恐る振り返った。背後の部屋が、画像に映った部屋と同じ配置になっていることに気づいた。


第五話:噂と警告

ミカが会社を突然退職してから数か月後、彼女の同僚たちの間で奇妙な噂が広がっていた。

「AIで変な画像を作りすぎると呪われるって話、知ってる?」
「ミカさん、急にいなくなったけど関係あるのかな…」

ある社員が何気なく生成した画像に、うっすらと映り込む影。それは、まるでミカが最初に見たあの歪んだ人影のようだった。

そして、その影が少しずつ、確かな輪郭を持ち始めていることに気づいた者は誰もいなかった。

(完)

後日談 画像と除霊

ミカの失踪から1年後、リナは霊媒師のカナに相談し、問題のパソコンを浄化する儀式を行った。カナは「これは霊ではなく、人の意図が生んだ“存在”だ」と語り、慎重に呪文を唱えた。画像フォルダに保存されていた歪んだ人影の写真は次々と消えていったが、最後の一枚だけは強く抵抗し、画面がひび割れるほどの衝撃を伴った。

最終的に儀式は成功し、影は消えた。だが、ネット上では「呪われた画像」の噂が絶えず、拡散したデータがどこかで形を変え、新たな犠牲者を待っているのかもしれない。リナは今も、ふとした瞬間にあの影の気配を感じることがあるという。

怖い話 自販機

 

第一話 缶コーヒー

郊外の静かなバス停。冬の寒さがまだ残る早朝、大学生のカオルは眠い目をこすりながら、いつものように缶コーヒーを自動販売機で買った。この自販機は、なぜか街灯もない場所にぽつんと立っているが、カオルにとっては慣れ親しんだ存在だった。

いつもの「ブラック」のボタンを押し、取り出し口から温かい缶を手に取った瞬間、どこか聞き覚えのない柔らかな声がした。

「今日も、頑張って。」

驚いて周囲を見回すが、人影はない。機械から漏れるかすかな音が耳に響くだけだ。不思議に思いながらも、声は気のせいだと考え、その場を後にした。

それから数日、カオルはその自販機でコーヒーを買うたびに、同じ声を耳にするようになった。声のトーンは落ち着いていて、どこか優しさが込められている。「気のせいじゃない…?」そんな疑問が頭をよぎるが、声の存在はカオルにとって次第に日常の一部となっていった。

ある夜、課題に追われ疲れ果てた彼が自販機の前に立つと、声はこう囁いた。

「疲れたね。でも、大丈夫。」

それはまるで、彼の心を見透かしているかのような言葉だった。


第二話 見えない何か

春の訪れとともに、カオルはその声に少しずつ親しみを感じ始めた。声は決して押しつけがましくなく、さりげない励ましをくれる存在だった。あるとき、カオルはふと自販機に向かって話しかけてみた。

「君、誰なんだ?」

当然、返事はない。しかし、缶コーヒーを取り出した瞬間、缶に結露で浮かぶ「ありがとう」の文字を目にして思わず息を飲んだ。それは一瞬で消えてしまったが、確かにそこにあったのだ。

その日を境に、カオルはその声に向かって毎日話しかけるようになった。声は明確な返答をするわけではないが、彼の気持ちに寄り添うように言葉を投げかけてくる。

「君って精霊みたいだな。」ある日そう言うと、缶に「笑顔」の文字が浮かび、彼の口元も自然にほころんだ。

一方で、周囲の人々はカオルの変化に気づいていた。彼の表情が柔らかくなり、以前よりも活き活きしている。友人のユウキは冗談めかして言った。

「何だよ、最近のポジティブさ。恋でもしてるのか?」

カオルは微笑んで、「まあ、そんなとこかもな」と答えた。


第三話 始まり

新しい学年が始まり、カオルは忙しさに追われる日々を送っていた。そんな中、例の自販機に足を運ぶことも少なくなっていく。それでもふと思い出したように訪れると、声は変わらずそこにいた。

「君のおかげで、ここまで来られたよ。」彼がそう言うと、声は穏やかにこう答えた。

「君はもう、ひとりで大丈夫だね。」

その日を最後に、声は消えてしまった。何度訪れても、もう言葉は聞こえない。ただ、自販機の前に咲く小さな花を見つけたとき、彼は胸の中に温かい感情が広がるのを感じた。

カオルは缶コーヒーを手に取り、自販機に向かって静かに呟いた。

「ありがとう、精霊さん。」

風が優しく吹き、まるでその言葉を届けるかのように、周囲の景色が一瞬輝いて見えた。

後日談:自販機

大学近くにあった自販機が撤去された後、その機械は自動販売機専門の管理業者「カミムスビ販売機株式会社」の倉庫に運び込まれた。この会社は、全国各地の古い自販機の回収や修理を手がけているが、社内にはその設立や業務内容に関して妙な噂が流れていた。

倉庫で働く若手社員のタカシは、運び込まれた古びた自販機を見て首をかしげた。

「これ、随分古いタイプですね。データログを調べたら、ちょっと普通じゃない記録が残ってるんです。」

タカシが上司のサカキにそう報告すると、彼は静かに頷いた。

「どんな記録だ?」

「誰も利用していない時間帯に動作ログが記録されていたり、内部メモリに『ありがとう』『笑顔』『頑張って』なんてメッセージが保存されてたり…。どう考えても機械の仕様じゃありえないです。」

サカキはその言葉に一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

「そうか、それは面白いな。お前、この自販機がどうしてこんな場所にあったか気にならないか?」

タカシは思わず頷いた。確かに、あの自販機の場所は普通の設置基準から考えれば不自然だった。

「実はな、この自販機は特別な理由で設置されたんだ。」

サカキはそう言うと、静かに自販機の横に腰を下ろした。そして語り始めた。


数十年前、この自販機の設置が決まったのは、ある神社の神職が推薦したからだという。その神社の神主は、この場所に「特別な存在」が宿ると感じたらしく、自販機を通じて人々の心に触れるための「器」を設置するよう依頼したという。

「つまり、この自販機は…神の使いが宿る場所だったんだ。」

サカキの言葉に、タカシは思わず笑いそうになったが、その表情の真剣さに気圧されて言葉を飲み込んだ。

「バカげてると思うかもしれないが、実際にこの自販機が設置されてから、その周辺で暮らす人々の心が軽くなったという噂が立ったんだよ。ある種の神託だな。」

「それじゃあ…あの『ありがとう』とか『笑顔』ってメッセージは…?」

「神の使いが、通りがかった人々に贈った言葉だろうよ。だが、それも使命を終えたということだ。この自販機がここに運ばれたのも、おそらくは次の役目に向かう準備だろう。」


タカシは、自販機を見つめながら不思議な気持ちに包まれていた。

その夜、倉庫を閉める際、彼は自販機の前に立ち、心の中で静かに呟いた。

「もし本当に神様の使いだったなら、今までありがとう。」

その瞬間、倉庫内の空気が一瞬だけ変わったように感じた。冷たくも暖かくもない、不思議な風がタカシの髪を揺らし、背筋を撫でるように通り過ぎていった。

そして翌日、自販機は倉庫から姿を消していた。どこへ運ばれたのか、誰にも知らされることはなかったが、それを気にする者はいなかった。ただタカシだけが、夢のようなその一夜を心の片隅に大切にしまい込んでいた。

「神の使い」と呼ばれたその自販機は、またどこかの街角で、静かに人々の心を癒やしているのかもしれない。

怖い話 廃品回収

第一話: 「ガラクタ」

カナエの住むアパートは、築20年以上の古びた建物で、周囲には同じような木造アパートが並んでいた。駅からは徒歩15分ほどで、通勤や買い物に不便ではないが、近隣に繁華街があるわけでもなく、生活はどこか味気ない。

そんな環境での一人暮らしも、もう5年が経つ。就職してからは仕事と家の往復が続き、特に大きな目標もなく、ただ日々を過ごしていた。休みの日には、スマホを片手にSNSを開き、友人たちの投稿をぼんやりと眺めるのが日課になっていた。

「また旅行か…」
画面には、大学時代の友人が南国のリゾートで楽しそうに笑う写真が映っている。その写真の下には、「この海、綺麗すぎ!」とコメントが添えられていた。

カナエは無意識にため息をつき、画面を閉じる。周囲の楽しげな生活と自分の退屈な日常を比べ、胸の奥に小さな重しがのしかかるようだった。

そのとき、遠くから聞こえてきたのが、廃品回収車のアナウンスだった。
「ご家庭で不要になった家電や家具はございませんか?」

どこにでもあるようなフレーズだが、妙にクリアな音声が耳に残った。カナエはふと窓を開けて外を見た。

道端に停まる古びたトラック。汚れた塗装に錆が浮き出ている。運転席から降りてきたのは作業服姿の男性。40代くらいだろうか、笑顔を浮かべて近隣の住人に話しかけていた。

「いい人そうだな」
カナエはそれ以上気にすることなく窓を閉め、部屋の片付けに戻った。しかしその夜、奇妙な夢を見た。

夢の中で、彼女は古びたトラックの荷台に立っていた。周囲を見回すと、壊れた家具や電化製品が積まれている。その中に、なぜか自分の姿があるような気がしてならなかった。目が覚めた時、体中に冷や汗をかいていた。

第二話: 「古いトラック」


カナエは、夢の残像がどこか気になりつつも、日常の雑事に追われていた。仕事では上司から追加のタスクを任され、帰宅しても家事が山積みだ。夢の内容は頭の片隅に残りつつも、現実に追い立てられるように忙しい日々が続いていた。

そんな中、週末の午後、再び廃品回収車の音が聞こえてきた。
「ご家庭で不要になった家電や家具はございませんか?」

その音声に、夢の記憶が蘇る。ふと部屋の中を見渡すと、壊れた電気スタンドや座るたびに軋む椅子が目に入った。これらはもう何年も放置されているが、処分する機会もなかった。

「この機会に片付けるか」
カナエはそう呟き、スタンドを抱えて部屋を出た。

外に出ると、例のトラックが少し離れた場所に停まっている。作業服姿の男性が荷台で何かを整理しているのが見えた。近くの住人も古い家具を持ち出し、男性と楽しげに話している。

「すみません、これお願いできますか?」
カナエが声をかけると、男性は振り返り、にこりと微笑んだ。
「ああ、ありがとうございます。ここに置いてください」

彼の対応は丁寧で、仕事にも慣れているように見えた。壊れたスタンドと椅子を荷台に積む姿は、どこにでもいる普通の廃品回収業者そのものだ。

だが、その作業の途中、彼の目が一瞬カナエを捉えた。その視線は微笑とは裏腹に冷たく、感情の読めないものだった。

「あれ?」
カナエは思わず目をそらし、何もなかったかのようにその場を離れた。

夜になると、再び夢を見た。今回は、トラックの荷台に積まれた家具の隣に、自分自身が横たわっている光景だった。自分が壊れた家具と同じ扱いを受けているような感覚に、背筋が凍る思いがした。

第三話: 「消えた住人」


翌朝、カナエはアパートの廊下で大家のサトミに声をかけられた。

「隣の部屋の人、急に引っ越したのよ」

驚いて問い返すと、サトミは困惑したように言葉を続けた。
「昨日、夕方くらいに突然トラックで荷物を運び出してたみたいなの。でも、全然挨拶もなくてね。何か急な事情でもあったのかしら」

「急な引っ越し…」
カナエは、その「トラック」という言葉に胸騒ぎを覚えた。昨夜見た夢と昨日の廃品回収車が頭の中で繋がり、不安が渦を巻く。

隣人の部屋をこっそり覗いてみると、扉の隙間から薄暗い室内が見えた。家具はほとんどなく、生活の痕跡が急に消えたようだった。

その日の午後、カナエは再び廃品回収車の音を聞いた。あのアナウンスが遠くから近づいてくる。窓を開けて外を見ると、また例の古びたトラックがアパート前に停まっている。

今度は彼らの様子をじっくり観察してみることにした。男性が近隣住民と親しげに会話を交わしながら、荷物を荷台に積んでいる。しかし、何かがおかしい。荷台にはシートがかけられているが、その下に不自然な形の「何か」がうごめいているように見えた。

「あれは何?」
心の中で問いながらも、外に出て確認する勇気は出ない。ただ、目を離せずにその場に立ち尽くしていた。

その時、男性がふと顔を上げ、カナエの視線に気づいたように思えた。彼は荷台のシートを直すふりをしながら、微笑を浮かべてカナエの方を見た。

慌ててカーテンを閉じたカナエは、心臓が張り裂けそうなくらいに鼓動するのを感じた。

「気づかれた…?」

カナエの中で、廃品回収車と隣人の失踪に何らかの関係があるのではという疑念が一気に膨れ上がる。

その夜、カナエは鍵を二重にかけ、テレビをつけたまま眠ることにした。しかし、薄暗い部屋の中で微かな足音が聞こえたような気がして、眠りは浅いままだった。

第四話: 「積み込まれるもの」


夜更け、カナエは目を覚ました。部屋の中は真っ暗で、テレビはいつの間にか自動で電源が切れていた。静寂の中、耳を澄ませると、遠くから聞こえる廃品回収車のアナウンスが微かに響いている。

「ご家庭で不要になった家電や家具はございませんか?」

背筋が凍る感覚に襲われた。こんな時間に来るわけがない――そう思いながらも、心のどこかで予感していた。それは彼らが自分を「回収しに来た」のだという確信だった。

部屋の玄関を見つめながら、カナエは深く息を飲み込む。すると、ドアが軽くノックされる音がした。

コン…コン…

一定の間隔で繰り返されるノック音。誰なのか聞くべきか、無視すべきか、頭の中で考えが巡る。しかし、恐怖で声が出せない。ノックはしばらく続いた後、静かになった。

カナエは少しだけほっとして、ドアスコープを覗き込む。そこには誰もいない。しかし、スコープの視界に、トラックの荷台が見えた。

「どうしてこんな場所にトラックが…?」

胸が高鳴る中、背後から気配を感じた。振り返ると、そこに作業服の男性が立っていた。いつの間にか部屋に入り込んでいたのだ。

「こんばんは。何か不要なものはありませんか?」

彼の笑顔は、最初に見たときと同じだ。しかし、その目は冷たく、カナエをじっと見つめていた。

「いや、何も…ありません…」
声を絞り出して答えるカナエに、男性は首を傾げた。そして、近づいてくる。

「あなた自身は?」

その言葉にゾッとし、カナエは咄嗟に逃げようとする。しかし、男性は驚くほどの力で腕を掴んできた。逃れようともがきながら、カナエは棚にあった花瓶を掴み、力任せに振り払った。

花瓶が男性の頭に当たり、彼は一瞬動きを止めた。その隙にカナエは部屋を飛び出し、廊下を駆け抜ける。

「助けて!誰か助けて!」

外に出ると、近所の住人たちがカナエの叫び声を聞いて出てきた。廃品回収車を指さし、助けを求めるが、トラックはエンジンをかけると静かに走り去っていった。男性の姿も、もうどこにも見当たらない。

一体、あれは何だったのか。近所の住人たちは困惑した様子だったが、カナエの震える姿を見て、警察に通報することを提案した。

第五話: 「噂と証言」


カナエはその後、近所の住人に助けられ、警察に事情を説明した。しかし、「廃品回収車」という話に対して警察は「単なる不審者だったのでは?」と片付けた。男性の特徴やトラックのナンバーを聞かれたものの、動揺していたカナエは正確に覚えていなかった。

数日後、カナエはアパートを引き払う決心をした。あの夜の恐怖はどうしても拭いきれず、この場所に住み続けることが精神的に耐えられなかったのだ。

しかし引っ越しの準備を進める中で、周囲から気になる噂を耳にした。近隣の住人の一人がこんな話をしていた。

「昔、この辺りでさ、急にいなくなる人がいるって噂があったんだよね。みんな夜逃げだとか言ってたけど、不自然なことが多かったみたいでさ…」

その噂に興味を持ったカナエは、住人たちにさらに詳しく話を聞いて回った。すると、かつてこの地域で頻繁に現れていた廃品回収車のことを語る人がいた。

「あの業者、変だったよ。荷台にシートがかかってて、中身を見せたがらないんだ。それに、ある日を境にぱったり来なくなったんだけど、その頃に何人かの住人がいなくなったって聞いたことがある」

カナエの体が震えた。シートに隠されていた「何か」と、隣人たちの失踪の関連性を否定できない。

カナエ自身が狙われたのは、彼女が「自分を不要だ」と感じていたからではないかと思い至った。あの業者は、人々の心の中にある「自らを捨てたい」という感情を嗅ぎ取る存在なのではないか――。

引っ越しを終え、新しい生活を始めたカナエだったが、夜になるとあのアナウンスの声が耳に蘇ることがあった。

「ご家庭で不要になった家電や家具はございませんか?」

それがただの記憶なのか、現実にまた廃品回収車が近づいているのか、カナエには確かめる勇気はなかった。


エピローグ

数週間後、近隣の別の住人が失踪したというニュースが報じられた。彼らの部屋には生活用品がそのまま残されており、夜逃げや失踪の理由を示す手がかりは何一つ見つからなかったという。

廃品回収車の目撃情報も途絶えたままだが、街のどこかではまだ、不要なものを探しているかもしれない――。

後日談: 「私の日々」


引っ越してから、私の生活は大きく変わった。いや、正確には「変えた」と言うべきかもしれない。

以前の私は、部屋の隅に散らばる物をそのままにして、ただ日々をやり過ごしていた。でも今は違う。朝起きたら必ず布団をたたみ、カーテンを開けて日光を部屋に入れる。使わなくなった物はすぐに整理して処分し、新しい物を買う時は、本当に必要かどうか慎重に考えるようになった。

職場でも、小さなことに積極的に取り組むようになった。以前なら、「どうせ私なんか…」と引っ込み思案になっていたが、今では「やってみます!」と声に出して行動するようにしている。それが思い通りにいかない時もあるけれど、それでも前に進む感覚が心地よい。

同僚のサエコがこんなことを言った。
「最近、カナエさん変わったよね。なんていうか、前より自信がある感じ」

その言葉を聞いて、私は少し驚いた。自分ではそこまで意識していなかったけれど、周りからそう見えるなら、少しは成長できたのだろうか。

休日には散歩をするようになった。前の生活では、休みの日は部屋にこもり、SNSを眺めて過ごすことが多かった。でも、外に出て季節の移ろいを感じたり、街中で見つけたカフェにふらりと入ったりするのが、今では楽しみの一つになっている。

この新しい生活を始めたきっかけが、あの「廃品回収業者」だというのが皮肉な話だ。彼らの荷台に積まれる運命から逃げ出したあの夜、私は初めて、自分がどれだけ「自分自身を不要なもの」と思い込んでいたかに気づいた。

だからこそ、私は変わる必要があったのだ。自分自身を「必要な存在」にするために。

ある日、散歩の途中で見かけた小さなフリーマーケットで、古びた雑貨が並んでいるのを見つけた。ふと、昔の自分のような物がそこに置かれているような気がして、立ち止まった。

「これ、いくらですか?」
私は気まぐれに、使い込まれた木製のフォトフレームを手に取った。

「その値段じゃないのよ。これは価値を見つける人が決めるの」
出店者の女性が笑いながら言ったその言葉が、心に妙に残った。

帰宅してから、私はそのフォトフレームに、久しぶりに笑顔を見せている自分の写真を飾った。それを眺めていると、自分もまた「価値を見つける人次第」なのかもしれないと思えた。

いまだに、廃品回収車のアナウンスが耳をよぎることがある。それは不意に訪れる恐怖ではあるけれど、そのたびに私は思う。

「もう私はあのトラックに積まれるものではない」

そして、私の新しい日々は続いていく。

怖い話 自動借入機

第一話「借入れ機の招き」

 

小さな田舎町に暮らすユウスケは、日々の仕事に疲れ切っていた。工場での労働は単調で、給料も生活を維持するのがやっと。加えて、家族に少しでも良い暮らしをさせたいという思いから、借金が膨らむ一方だった。

 

ある夜、ユウスケは職場からの帰り道に、奇妙な看板を見つけた。暗闇の中でぼんやりと光るその看板には、**「自動借入れ機」**とだけ書かれていた。自動販売機のようなシルエットが描かれており、その下には細い矢印が「こちら」と誘うように示している。

 

「なんだ、これ……?」

興味本位で矢印の方向に歩いていくと、小さな駐車場の隅にその機械はひっそりと置かれていた。一見すると普通のATMのようだが、どこにも銀行の名前はない。古びた筐体には小さな画面と、紙幣の投入口のようなスリットがあるだけだった。

 

ユウスケが立ち尽くしていると、画面が突然明るくなり、文字が表示された。

 

「いくら必要ですか?」

 

ユウスケは一瞬、冗談かと思った。だが、この町では奇妙な噂が広がっている。どこからともなく現れるこの機械は、本当に金を貸してくれるが、利用した人には何かしらの「代償」があるという話だった。

 

疲れ果てたユウスケは、その噂を気にしつつも、目の前の現金の誘惑に抗えなかった。画面の指示に従い「10万円」と入力すると、機械から紙幣が出てきた。

 

「あっさりしすぎてるな……」

それだけを呟いて家に帰る途中、ふと後ろを振り返った。借入れ機は、まるで最初からそこに存在していなかったかのように消えていた。

 

第二話「代償」

 

10万円を手にしたユウスケは、最初は大喜びだった。家賃を払えずに困っていた大家にも、文句を言われることなく笑顔で対応できたし、妻と娘に久しぶりの外食を提案することもできた。

 

だが、その平穏は長くは続かなかった。借入れ機を使ってから3日後のことだった。朝、目を覚ますと、家中が異様に静まり返っている。いつもは聞こえるはずの娘の声や妻の足音が、どこにもないのだ。

 

「おーい、どこ行った?」

不安になりながら家中を探すと、リビングの壁に奇妙な文字が浮かび上がっていた。

 

「代償を払ってください」

 

その言葉を読んだ瞬間、ユウスケの耳に不気味な音が聞こえ始めた。それは、何かが囁くような声や、無機質な金属音のようにも思える。家族が消えたのか、それとも自分が何かの世界に迷い込んだのか——状況が飲み込めないまま、ユウスケは町のあらゆる場所を探し回った。

 

だが、家族の姿はどこにもなかった。その代わり、あの自動借入れ機を再び見つけることができたのだ。町外れの廃工場の前に、それは堂々と存在していた。

 

「返せ! 家族を返せ!」

ユウスケが叫ぶと、機械の画面にまた文字が浮かび上がった。

 

「家族は預かりました。返済が必要です」

 

その瞬間、ユウスケの中に恐怖と怒りが交錯した。「どうやって返済するんだ?」と問い詰めると、画面は淡々と応じた。

 

「命、記憶、未来から選んでください」

 

第三話「選択の行方」

 

ユウスケは絶望の中で考え続けた。機械が提示する選択肢はどれも犠牲が大きい。だが、家族を取り戻すためには、どれかを選ばざるを得ない。

 

「未来を差し出せば……どうなるんだ?」

そう尋ねると、機械は答えた。

 

「あなたの未来は停止します。家族は戻りますが、あなたは時間の中で動けなくなるでしょう」

 

ユウスケは愕然とした。命を差し出せば死ぬだろうし、記憶を失えば家族を取り戻しても彼らを覚えていられない。それでも、どうにか家族を救いたい一心で、彼は「未来」を選択することを決意した。

 

機械に手をかざすと、画面が光り、彼の意識は遠のいた。そして、ふと気づくと自宅のリビングに戻っていた。娘が無邪気に笑い、妻が料理をしている光景が目の前に広がっている。

 

「……夢、だったのか?」

ユウスケは自分の手のひらを見つめた。違和感があった。時計の針がまるで動いていない。そして、自分の体もまた、どんなに力を込めても一歩も動けなかった。

 

家族が幸せそうに暮らしている様子を見ながら、ユウスケの意識だけが時間の中に取り残されていく。

 

その家族の笑顔が、彼にとって救いだったのか、それとも絶望だったのか——それは誰にも分からない。

 

この話がどのような結末を迎えたのか、町では噂話として語られる。だが、自動借入れ機を利用した人が皆同じ運命を辿るわけではないらしい。ただ一つ言えるのは、**「代償なくして手に入るものはない」**ということだ。

怖い話 緊急特別番組

第一話 「異常な中継」

 

地方テレビ局ナカマチテレビは、ある夜突然の緊急特別番組を放送した。その内容は、近隣の山中で行方不明事件が相次いでいる件についての特集だった。

 

司会のベテランキャスター・カサイと新人リポーターのマヤがスタジオを担当し、中継リポーターのクニエが現場からの報告を行うという構成だ。中継が始まると、山道の暗い映像が画面に映し出され、クニエが緊張した面持ちで語り始めた。

 

「この地域で、わずか数週間の間に8人が行方不明になっています。目撃情報や痕跡は何も残されておらず、警察も原因を特定できていません。」

 

ライトに照らされる霧の中、木々が揺れ、不気味な雰囲気が漂う。その中で突然、カメラが微妙に乱れ、音声が途切れた。スタッフの一人がクニエの肩を叩き、小声で何かを囁く。

 

「…さっき、何か聞こえましたよね?」

 

だがクニエは首を振り、「気のせいだろう」と言いながら、慎重にレポートを続ける。だが視聴者からの電話が殺到し、「画面の後ろに人影のようなものが見えた」「奇妙な声が聞こえた」という情報が寄せられた。

 

その時、突然カメラが大きく揺れ、クニエが驚愕の表情で「何かが…通った」とつぶやく。

 

映像はそこで中断され、放送はスタジオに切り替わる。だが、カサイの冷静な説明にもかかわらず、視聴者の不安は募っていく。そして中継班からの連絡が取れなくなり、特番は不穏な空気のまま終了した。

 

第二話 「消えた中継班」

 

翌朝、ナカマチテレビの局内は混乱に包まれていた。中継班と連絡が途絶えたままであり、彼らが向かった山中の捜索が行われているという情報だけがもたらされていた。

 

しかし、奇妙なことに現場の警察は「中継車が見つかっていない」と報告する。確かに昨晩の放送では、山道を進む車内の映像が映っていたのに、車ごと消えているというのだ。

 

不安を抱えながらも、ナカマチテレビは失踪事件の調査を続けるため、別の取材班を派遣することを決定した。新人リポーターのマヤも同行を志願し、局内では勇敢だと称賛される一方で「何かに引き寄せられているのでは」という噂も囁かれていた。

 

マヤたちが山に到着すると、昨夜の放送で映されていた場所に、奇妙な痕跡が残されていた。中継車のタイヤ跡が地面に深く刻まれているが、その先にはまるで大きな爪で引き裂かれたような地割れが続いている。

 

「……こんな跡、普通はできないはずです」

 

同行していた専門家が声を震わせながらつぶやいたその瞬間、カメラが突然ピンボケになり、妙なノイズ音が響いた。映像を確認したスタッフが叫ぶ。

 

「今…映りました! 誰かが…!」

 

だがその瞬間、画面は完全に真っ暗になり、放送は再び途絶えた。

 

第三話 「山に潜む何か」

 

取材班が再び消息を絶ったことで、ナカマチテレビは世間の注目を浴び始めた。SNSでは「山に何かがいる」という噂が拡散し、専門家や霊能者までもが議論を始める。

 

局は最後の手段として、ベテランカメラマンのオオタを中心とした特別調査班を編成し、スタジオからはカサイがリアルタイムで指示を出す形で再び山へ向かった。

 

調査班が山奥へ進むと、徐々に電波が不安定になり始める。やがてカメラが捉えたのは、奇妙な形をした木々が立ち並ぶ異様な光景だった。

 

「これ…木じゃないですよね?」

 

オオタが低い声でつぶやきながら手を触れると、それは湿った肉のような感触を返した。恐怖で凍りつくスタッフたち。

 

その直後、周囲の空気が急に冷たくなり、遠くから妙な囁き声が聞こえてきた。調査班は急いで撤退を試みるが、その場から一歩も動けない感覚に襲われる。

 

第四話 「異界への扉」

 

次の日、ナカマチテレビの放送は完全に停止した。局内の関係者たちは、最後の調査班が現地から帰還していないことを知りながらも、それ以上の対応をすることを拒否した。

 

一方、警察の捜索隊が山に入ったが、見つかったのは昨夜の調査班が使用していたカメラだけだった。その映像を解析すると、最後の瞬間、木々の間から「異様な光の柱」が立ち上がり、その中に次々と人々が吸い込まれる様子が映されていた。

 

映像の終盤、奇妙な形をした影がカメラに近づき、そこで記録は途絶えていた。

 

第五話 「消えたテレビ局」

 

後日、ナカマチテレビ自体が完全に閉鎖されたというニュースが流れる。理由は「経営不振」と発表されたが、実際には局員たちの多くが姿を消し、残ったスタッフも精神的な衰弱が激しかったためだという。

 

SNSでは、ナカマチテレビの放送局跡に奇妙な光が差し込んでいるという噂が後を絶たない。また、かつての視聴者から「深夜になると勝手にテレビがつき、異常な音が聞こえる」という報告が続出している。

 

そしてある日、深夜の山道で迷ったという一人の男性が、ふと廃墟となった放送局の近くを通った。その瞬間、暗闇の中から「助けてください」と微かな声が聞こえたが、振り返るとそこには誰もいなかった。

 

その男性が去った後、廃墟の中で古びたカメラのランプが一瞬だけ光を放ったと言われている。

怖い話 旧家の秘密

第一話 「招かれざる帰省」

 

大学生のコウタは久しぶりに実家へ帰省することになった。実家は山奥の古びた旧家で、数世代にわたり続く伝統の家だった。両親や親戚の人間は常に家のしきたりを守ることを重要視しており、幼い頃からコウタはその厳格さに窮屈さを感じていた。

 

今回は祖父が危篤との知らせを受けての帰省だった。久しぶりに足を踏み入れた家は、以前と変わらず薄暗く、湿った空気が漂っていた。家の奥にある仏間では親族が集まり、祖父の容態を見守っていたが、何か重苦しい沈黙が場を支配している。

 

コウタが目を引かれたのは、仏間の隅に置かれた古びた木箱だった。見たことのないものだったが、親族たちはその木箱を意識的に避けているように見える。不審に思ったコウタが母親に尋ねると、「それには触れないで」と短く答えられた。その場の雰囲気から、それ以上聞くことはできなかった。

 

その夜、祖父は静かに息を引き取った。仏間に残された親族たちは祖父の死を悼みつつ、何か別の恐れを抱いているように見えた。祖父の死と共に、家に隠された何かが目覚めたかのような、異様な感覚がコウタを包み込む。

 

第二話 「祖父の遺言」

 

祖父の葬儀が終わった翌日、コウタは仏間で祖父が残した遺言書を受け取った。それは他の親族には内緒で渡されたもので、内容を読んで驚愕した。

「家の奥にある木箱を開けてはならない。もし開けてしまったならば、その中身を山の祠へ返すこと。理由は聞くな。」

 

その注意書きに加え、祖父は家の古い習慣や伝承についても書き残していた。この家はかつて、ある村人を祀ることで守られていたという。その村人は病を治す不思議な力を持っていたが、ある事件をきっかけに命を奪われ、その遺骨を祠に納めて封じたのだという。その遺骨こそが木箱の中身であり、それが家の繁栄を支えてきたという話だった。

 

コウタは迷った。祖父の遺言を守るべきか、それとも木箱を開けるべきか。そんな彼の迷いを余所に、家の中では不気味な現象が起こり始めた。夜中に襖が勝手に開き、廊下を歩く足音が聞こえる。家族はこれを祖父の死による「家の変化」だと囁いていたが、誰も真相に触れようとはしない。

 

ある夜、仏間に忍び込んだコウタは木箱を調べる決意を固めた。遺言を無視してでも、自分自身で真実を知る必要があると感じたのだ。

 

第三話 「禁忌の木箱」

 

木箱の蓋を外すと、中には古びた布に包まれた何かが入っていた。慎重に布を開けると、そこにあったのは小さな人骨の一部と思われるものだった。まるで誰かの骨が燃え尽きたような黒ずんだ骨片。それに触れた瞬間、頭に言葉にならない何かが流れ込んできた。

 

「帰せ。」

 

その声に驚いて骨片を放り投げると、家全体が軋むような音を立てて揺れ始めた。恐怖に駆られたコウタは骨片を元に戻し、木箱の蓋を閉じようとしたが、蓋が閉まらない。周囲には次第に異形の影が現れ始め、家の空間そのものが歪むような感覚が襲った。

 

その場から逃げ出したコウタは、翌朝、家族に事実を告げようとする。しかし母親からは厳しい声で「誰にも言わないで」と釘を刺された。それどころか親族たちが集まり、木箱の処遇について話し合う場が開かれていた。全員がどこかで事態の深刻さを理解しているようだったが、誰も解決策を口にしない。

 

第四話 「山の祠」

 

コウタは祖父の遺言を守る決意をし、骨片を山の祠へ返すことにした。しかし山は急峻で、道中には次々と異常な現象が彼を襲う。足元が崩れそうになったり、見えない何かに引っ張られるような感覚を覚えたりした。

 

ようやく祠にたどり着いたコウタが骨片を納めると、周囲の空気が凍るように冷たくなった。そして不気味なほど静寂が広がった後、祠が音を立てて崩れ落ちた。何かが解放されたかのような気配を感じたコウタは、恐怖の中で家へと戻るしかなかった。

 

家に帰ると、すべてが元に戻っているかのように平穏を取り戻していた。だが、何か根本的に変わってしまった気配も否めなかった。

 

第五話 「後日談」

 

後日、コウタは家族から「木箱の存在は秘密にする」という厳命を受ける。しかし数日後、地元の新聞に小さな記事が載った。「山奥の祠跡で異常な動物の死骸が発見される」と。祠の跡地で鳥や獣の死骸が山積みになっていたという。

 

さらに、コウタの家では夜中になると誰もいない仏間から低い唸り声が聞こえるようになったという噂が村で広がっていた。家の繁栄を支えるものは、本当に封じられていたものだけだったのだろうか。

 

コウタは一つの可能性に気づく。あの祠が崩れた時、何か「新しいもの」がこの世に顕現してしまったのではないか、と。そしてその答えを知る者は、すでにこの世にはいなかった。